深海の極限環境

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深海の極限環境

深海の極限環境は近年、注目されています。深海の極限環境の秘密とは?

深海の極限環境

 熱水噴出孔
Ocean Exploration and Research より利用

深海はとても過酷な環境だ。光も届かないがゆえに植物プランクトンは光合成ができなく、深海全体は低温、極め付きに水深による水圧が強いということもあり、非常に生きにくい。しかし、これらは深海ではまだ序の口だ。例としては熱水噴出孔や冷水湧出帯があげられる。熱水噴出孔からは数百度の高酸性・アルカリ性の熱湯が噴出し、冷水湧出帯には有害物質に富んだ水が溜まっている。こういった生命が生きにくい環境は生物学で極限環境(extreme environment)と呼ばれる。熱水噴出孔や冷水湧出帯は極限環境の中の極限環境だ。ちなみに、深海も極限環境に分類されている。こういったまさに「極限」環境にも生き物はたくましく生きている。そのような生命体は極限環境微生物と呼ばれている。近代、極限環境は生命科学のなかでも熱心に研究されている。

なぜ、極限環境は注目される?

 Esmeralda Bank Craterの蛸
Ocean Exploration and Research より利用

理由は主に三つある。一つ目は、生存条件の限界を知れるからだ。これは皆さんも知っているであろう宇宙における生命探索においても重要な情報だ。どのような環境の星なら生命のいる可能性があるのかを知る手掛かりになるからだ。二つ目は生命の環境への適応の仕組みを知る手掛かりになるからだ。例えば、人間は60℃のお湯に手を入れるとやけどをしてしまうし、タコを100℃の沸騰水中に入れると茹でだこになる。これらは人間やタコを構成するたんぱく質が高熱で編成してしまうからである。要するに、もしもタコが100℃の環境に住んでいるとして、タコののたんぱく質が100℃でなく150℃で変性するとしたら、タコは沸騰水中に入れられてもたんぱく質は壊れず、変性して茹でだこになることはないのだ。高音環境にすむ生物と常温環境に住む生物のたんぱく質を比較することで高音環境でも壊れないたんぱく質の仕組みを知る手掛かりになる。最後の理由はバイオテクノロジーへの応用がきくからだ。触媒能を持つたんぱく質の酵素は金属触媒と比べると常温常圧下で働き、反応特異性と反応効率が比較的早く、副生成物がほとんど生じないという都合の良い優れた特性をもっている。しかし、一般的な酵素は安定性が低く、すぐに壊れてしまう。そこで、安定性が高くて壊れにくい高温の極限環境に住む微生物の酵素が、工業用に使われ始めている。また、アルカリ性の洗剤にはアルカリ性の極限環境に住む微生物の酵素が使われている。このように、極限環境生物の研究がバイオテクノロジーの応用に展開された事例はたくさんあり、今後も増えていくことが期待されている。

極限環境に対する生物の対応

Ocean Exploration and Research より利用

過酷な状況の中でも、生物は目まぐるしく進化し、たくましく生きていく。熱水噴出孔に対応したポンペイワームはそのいい例だ。ポンペイワームはバクテリアでできた鎧のようなものを背負い、非常に効率的に致死的なケミカルと熱から身を守っている。他にも、特化したチューブで身を護るハオリムシや貝殻で体を守るり、共生細菌からエネルギー源を得るシロウリガイなどがいる。だが、熱水噴出孔や冷水湧水は周りから切り離されているようなものなので、進化に進化した固有種が多い。

まとめ

近年は技術が上がり、深海で見つかる固有種が増えている。けれども、人間の知っている深海はまだ全体の五%にも満たないという。要するに、九十五パーセントもの深海はまだ謎に満ちているのだ。たかが深海、されど深海だ。私たちに有益な情報が見つかる可能性は大いにありうる。極限環境生物は気の遠く難るような年月をかけて環境に特化してきた。その特化した所をよく観察すると、いろいろな有益な情報が得られる。先ほど説明したたんぱく質の酵素も、すでに産業などに生かされている。「エコパルプ」という環境によりいい紙などを作るパルプや、少量で簡単に汚れが落ちる洗剤もすべて、極限環境生物の特化した特徴が活躍している。人間が深海のすべてを知る日は果たしてくるのだろうか。何百年、解明にかかるのだろうか。もしかしたら深海のすべては解明されることはないかもしれない。けれどもそれを少しでも多く解明し、未来に引き継ぐ事が私達の使命だと私は思う。